士業のホームページで料金を書くかどうかは、公開するかしないかではなく、どの粒度で書くかの問題です。総額を1つ出す必要はありません。条件と幅で書けば、実態と離れずに公開できます。
この記事は、顧問料や報酬をサイトに載せるべきか迷っている税理士・社労士事務所の方に向けて書いています。
結論:3段階のどれかで書く
| 段階 | 書き方 | 向いている事務所 |
|---|---|---|
| 1. 表で公開 | 年商×訪問頻度など2軸の表 | 顧問業務が中心。相談者の幅が広い |
| 2. 下限+条件 | 「月額◯円〜(年商◯円未満の場合)」 | 案件ごとの差が大きい |
| 3. 事例で提示 | 想定ケースを3つ挙げ、それぞれの金額 | 相続・許認可など単発業務が中心 |
どの段階でも、含まれない費用を必ず分けて書きます。 これを書かないと、後から追加費用が出たときに信用を損ないます。
課題:「要相談」だけだと候補から外れる
料金の記載が「別途お見積もり」だけの場合、相談者は次のように受け取ります。
- 高いのではないか
- 聞くと断りにくくなるのではないか
- 比較ができないので、後回しにしよう
3つ目が最も多い反応です。その場で候補から外れるのではなく、判断が保留になり、そのまま忘れられます。 明確に断られるより、こちらのほうが多く起きています。
一方で、金額だけを大きく出すのも逆効果です。安さで選ばれると、後の値下げ交渉や早期の解約につながります。幅と条件をセットにするのが、この2つを避ける形です。
解決策1:2軸の表で書く(顧問業務)
顧問料は、事業規模と関与の深さで決まります。この2つを軸にすれば、案件ごとの差を保ったまま公開できます。
- 縦軸:年商(3〜4段階)
- 横軸:訪問頻度(年1回・年4回・毎月)
表の各欄には金額の幅を入れます。1つの数字に絞る必要はありません。「◯万円〜◯万円」で構いません。 実態に幅があるなら、そのまま出したほうが後で揉めません。
社労士業務なら、縦軸を従業員数にすると同じ形で組めます。給与計算の有無、手続きの範囲を横軸に置きます。
表を作るときに迷うのが、下限をどこに置くかです。実際に受任している最も低い金額を下限にすると、その条件で問い合わせが集中します。逆に平均的な金額を下限にすると、小規模の相談者が最初から諦めます。
現実的なのは、受任してもよいと考えている最低条件を下限にすることです。「年商1,000万円未満・年1回訪問」で受けるつもりがあるなら、その金額を書きます。受けるつもりがないなら、その行を表から外し、対象を明記してください。表に載っている以上、その条件で依頼できると読まれます。
解決策2:含まれない費用を、同じ画面に置く
顧問料の表とは別に、次のような項目を並べてください。
| 別途かかるもの | 目安 |
|---|---|
| 年末調整・法定調書 | 記載する |
| 償却資産税の申告 | 記載する |
| 税務調査の立ち会い | 記載する |
| 記帳代行(仕訳数に応じて) | 記載する |
別ページに逃がさないでください。 顧問料を見た直後に見えることに意味があります。ページを分けると、見落とした相談者が後から不満を持ちます。
書く順番も効きます。含まれるものを先に並べ、そのあとに含まれないものを置いてください。逆にすると、条件の多い事務所という印象が先に立ちます。同じ情報でも、並び順で受け取られ方が変わります。
なお、金額を書かない項目があっても構いません。「税務調査の立ち会いは、日数に応じて別途お見積もり」と書くだけでも、後から発生する費用があることは伝わります。存在を伏せることと、金額を伏せることは別です。
記帳代行の扱いも、あらかじめ決めておいてください。顧問料に含めるのか、仕訳数に応じた別料金にするのかで、総額が大きく変わります。ここが曖昧なまま契約すると、毎月の作業量をめぐって話し合いが必要になります。サイトに書いておくと、その説明が契約前に終わります。
相談前の不安を消す書き方は、士業のホームページで相談が増えない理由で扱っています。料金の見せ方を含めてサイト全体を整えるなら、ブランディングデザインの範囲になります。
解決策3:単発業務は、想定ケースで書く
相続や許認可のように、案件ごとの差が大きい業務は、表よりも想定ケースが向きます。
- 遺産総額5,000万円・相続人2名・不動産1件の場合
- 遺産総額1億円・相続人3名・不動産2件・非上場株式ありの場合
このように条件を書いたうえで金額を示すと、自分がどのあたりかを判断できます。料率で示す方法もありますが、料率だけだと総額の想像がつかないため、金額の例を1つは添えてください。
加算される条件(相続人の人数、不動産の件数、申告期限までの残り期間)も並べておくと、後の説明が要りません。
想定ケースは、実際に受任した案件をそのまま使わないでください。依頼者が特定される恐れがあります。 条件を組み合わせた一般的なケースとして書き、実在の案件だと読めないようにしてください。金額の妥当性は、条件の組み合わせで示せます。
ケースは3つ程度が扱いやすい数です。少なすぎると幅が伝わらず、多すぎると読む側が自分の位置を探せなくなります。小・中・大の3段階で並べるのが分かりやすい形です。
解決策4:値上げの余地を残す書き方にする
料金を公開すると変更しにくくなる、という懸念はもっともです。次の2つで対応できます。
- 「〜」を使って下限で書く。 上限を書かなければ、上振れの説明ができます
- 改定日を明記する。「2026年4月改定」と入れておけば、次の改定も自然に見えます
金額そのものより、いつ時点の情報かが書かれていないことのほうが不信を招きます。日付を入れる習慣をつけてください。
改定するときは、既存の顧問先への説明が先です。サイトの表だけが先に変わっていると、既存の契約との差を指摘されることがあります。サイトの更新は、案内を出したあとに行ってください。 順番を逆にしないだけで、余計な説明が要らなくなります。
解決策5:書いたあとに問い合わせの中身が変わる
料金を公開すると、問い合わせの件数は減ることがあります。ただし内容は変わります。
- 「料金を教えてください」という質問が減る
- 初回面談で、業務範囲の話から始められる
- 契約前の値下げ交渉が減る
返信と見積もりにかかる時間は、受任しない相手にも同じだけかかります。 少人数の事務所ほど、件数より中身を取るほうが実務に合います。
よくある質問
Q. 同業に料金を見られるのが気になります。
A. 見られます。ただし、見ているのは同業だけではありません。公開している事務所が増えている以上、公開していないこと自体が比較の対象になっています。同業対策で失う相談のほうが大きいと考えるのが現実的です。
Q. 顧問料の幅が大きすぎて、表にできません。
A. 軸を増やしてください。年商だけで幅が出るなら、業種や仕訳数を2つ目の軸に足します。それでも収まらない場合は、想定ケース方式に切り替えたほうが早く済みます。
Q. 料金ページはどこに置けばいいですか。
A. 独立したページを1枚作り、サービスの各ページからも同じ表を参照できるようにしてください。 相談者は業務の説明を読んだ直後に金額を知りたくなります。そのたびに料金ページへ移動させると、離脱します。
まとめ
料金は、公開するかしないかではなく、粒度の問題です。2軸の表、下限+条件、想定ケースの3つから、業務の性質に合うものを選んでください。含まれない費用を同じ画面に置くことと、改定日を書くことが、後の信用を守ります。
どの粒度が合うかは、業務の構成によって変わります。扱っている業務を伺えば、書き方の案をお出しできます。お問い合わせからご相談ください。